荒木孝信行政書士事務所

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HACCPって何ですか?②

前回に引き続き、HACCPの概略についてのお話です。

 

対象事業者

 全ての食品事業者がHACCPに沿った衛生管理の対象ですが、事業内容や規模によりHACCP導入の程度が2段階に分けられています。

 

<HACCPに基づく衛生管理>

 HACCP7原則に基づく厳格な運用が求められる衛生管理です。と畜場、食肉処理場のほか、下記の<HACCPの考え方を取り入れた衛生管理>の対象とならない全ての事業者が対象となります。

 

<HACCPの考え方を取り入れた衛生管理>

 一般的な衛生管理を基本としながら、必要に応じてHACCPの定めている衛生管理の手法を取り入れた衛生管理です。小規模な事業者等にHACCPの厳格な運用を求めることは過度な負担となることから、緩やかな形でのHACCPの導入が認められます。

 対象となる事業者は下記の事業者です。

  • 食品を製造または加工し、当該店舗で小売販売する営業者
  • 飲食店営業者・喫茶店営業者・パン(5日程度の消費期限のもの)製造業者・惣菜製造業者・自動販売機により食品を調理し、販売する営業者
  • 容器包装に入れられ、または包まれた食品のみを貯蔵、運搬、販売する営業者
  • 食品を分割し、容器包装に入れ、または包み販売する営業者
  • 食品の取り扱いに従事するものの数が50人未満の小規模営業者

 

HACCP7原則とは

 HACCPシステムを構築する上で基本となる仕組み、原則です。

 

<原則1:危害要因分析の実施>

 工程ごとに原材料由来や工程中に発生しうる危害要因(食中毒や異物混入等の原因)を列挙し、管理する方法を挙げていく。

 

<原則2:重要管理点の決定>

 危害要因を除去、低減すべき特に重要な工程を決定する。(加熱殺菌や金属探知など)

 

<原則3:管理基準の設定>

 原則1・2でで特定した重要な工程を適切に管理するための基準を設定する。(温度、時間など)

 

<原則4:モニタリング方法の設定>

 重要管理点が正しく管理されているかを適切な頻度で確認、記録する。

 

<原則5:改善措置の設定>

 モニタリングの結果、原則3の管理基準が逸脱したときに構ずべき措置を設定する。

 

<原則6:検証方法の設定>

 HACCPプランに従って管理が行われているか、修正が必要かどうか検証する。

 

<原則7:記録と保存方法の設定>

 HACCPが実施され、問題が生じた際に原因究明に役立つよう記録を維持・管理する。

 

具体的にはどういったことをすれば良いのか?

 <HACCPに基づく衛生管理>を要求される事業者は、HACCP7原則に基づいて衛生管理計画を立て、実施、記録し、見直しを図るという一連の作業を繰り返すことで、より良い衛生管理としていくことが求められます。

 具体的には、施設や設備の衛生管理といった従来から行われている一般的な衛生管理を引き続き実施するとともに、原料の受入から保管、加熱、冷却、包装といった各製造工程ごとに分析して問題となるポイントを見つけ出し、その中でも特に重要な工程をしっかり管理、記録し、定期的な検証を実施していくことになります。

 

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書

 <HACCPに基づく衛生管理>においてはHACCP7原則に基づいた厳格なHACCPの運用が求められます。これに対して<HACCPの考え方を取り入れた衛生管理>においてはHACCPの趣旨を汲み、HACCP7原則を簡略化した形で実施することが認められています。もっとも簡略化するとはいえ、具体的にどのようなことをすればよいかは通常の事業者にとっては難しい話です。そこで各団体が手引書を作成し、HACCP運用の指針を示しています。原則として各事業者はこの手引書を参考にしながらHACCPに取り組むことになります。

厚生労働省 HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書

 

HACCPを実施しないとどうなる?

 HACCPは完全義務化され、全ての食品事業者はこの導入・実施が求められていますが、HACCPを導入しなかったことに対する直接的な罰則は規定されていません。しかしながらHACCPを実施しないということは食品衛生法に規定する衛生管理の不備となります。その結果として食中毒等を起こしてしまった場合には、従来通り改善指導や行政処分の対象となり、最終的には食品衛生法に定められている3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる可能性もあります。
 また食品衛生法の施行にあたっては各都道府県で罰則規定を設けることができるとなっているため、条例によっては別途処罰を受ける可能性もあります。
 なお今回の食品衛生法の改正においては食品等事業者の営業許可、届出の制度も同時に整備されましたが、この申請、届出においてHACCPの取組みについての申告欄が設けられていますので、罰則がないからといって対応を怠ると許可、届出が受理されない可能性があります。

参考:東京都福祉保健局 営業許可申請書