食中毒の基礎知識④
今回は食中毒の各論です。個別の病原菌やウィルス(生物的危害要因)についてその特徴を紹介していきます。食中毒の原因となる菌を知って、HACCPの導入、対策に役立ててください。
ノロウィルス
特徴
ヒトの腸管内で増殖し、調理従事者から食品が汚染されて発生する事例が多い。
ごく少量のウィルスで食中毒を起こす。
食品への汚染経路
調理従事者の手指からの汚染。
汚染された食材を調理した調理器具からの汚染。
糞便、嘔吐物からの接触感染、経口感染、飛沫感染など。
原因食品
カキ、アサリ、シジミなどの二枚貝。
二次汚染を受けたあらゆる食品。
対策
調理従事者は普段から二枚貝の生食を避ける。
十分な手洗いを行う。
中心部を85℃~90℃で90秒間以上の加熱を行う。
嘔吐物などの処理の際には、手袋、マスクなど十分な感染予防対策を行い、500~1,000mg/lの次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用する。
カンピロバクター
特徴
500個程度の少量の菌で食中毒を起こす感染型の食中毒菌。
酸素の薄い状態を好む微好気性菌。常温で空気にされされた状態では徐々に死滅する。
乾燥に弱い。
食品への汚染経路
食肉加工工程における家畜、家禽などの糞による汚染。
調理工程における人の指、調理器具などを介した食品への二次感染。
感染した食肉の生、加熱不足での摂取。
原因食品
鳥刺しなどの生、加熱不足の鶏肉。
鳥類、家畜の糞などの汚染を受けた沢水、井戸水。
対策
中心部75℃1分以上の加熱。
ドリップによる汚染の防止。
肉専用のまな板等を用意し、使用後はすぐに洗浄、消毒を行う。
十分な手洗いを行う。
腸管出血性大腸菌
特徴
10~100個程度の少量の菌で食中毒を起こす感染型の食中毒菌。
ベロ毒素を産出し、出血性腸炎、消化管合併症、溶血性尿毒症症候群などの重篤な症状を引き起こす。
食品への汚染経路
牛や羊などの糞便からの汚染。
感染しているものの自覚症状のない(不顕性感染)調理従事者による汚染。
汚染された食肉類から、他の食品や調理器具への二次汚染。
原因食品
汚染された肉や内臓肉。
二次汚染されたあらゆる食品。
対策
食肉の加工は中心部75℃1分以上の加熱を行う。
ドリップによる汚染の防止。
肉専用のまな板等を用意し、使用後はすぐに洗浄、消毒を行う。