食中毒の基礎知識⑥
今回紹介する三種類は芽胞菌です。通常の加熱では死滅が困難なため、増やさないための対策がメインとなる病原菌です。
ボツリヌス菌
特徴
自然界に広く存在する。
偏性嫌気性菌
食品への汚染経路
肉、魚、野菜などの食材に付着した状態で加工され、嫌気状態(酸素のない状態)になると食品中でボツリヌス毒素を産出して食中毒を起こす。
原因食品
缶詰、瓶詰食品、真空パック詰め食品、完全な加圧加熱殺菌がなされていない真空包装形態の食品。
対策
十分な洗浄を行う。
芽胞を加圧加熱殺菌(120℃,4分以上)により死滅させる。
水分活性<0.94、pH<4.6、温度<10℃で保存し、ボツリヌス毒素の産出を防ぐ。
ボツリヌス毒素を80℃ 30分、または100℃ 10分以上の加熱により破壊する。
ウエルシュ菌
特徴
自然界に広く分布し、人や動物の腸管内にも生息する。
偏性嫌気性菌。
熱に強い芽胞を生成する。(100℃ 6時間の加熱でも死滅しない。)
大量調理の給食施設でよく起きるため、給食病の異名を持つ。
食品への汚染経路
食材とともに加熱調理食品中に入り込み、大量加熱調理による嫌気状態の中、50℃を下回ったあたりで増殖する。これを食べることにより、小腸内でエンテロトキシンを算出し食中毒を起こす。
原因食品
煮物、カレー、シチュー、スープなど肉や魚介類を原料として加熱調理された食品。
特に大鍋や深底の寸胴鍋などで大量に調理されたもの。
対策
食材の衛生的な取り扱い。
前日調理や室温放置を避ける。
調理後は小分けして冷却し、20℃~50℃の危険温度域を速やかに通過させる。
攪拌させ空気に触れるようにする。
提供直前に十分な加熱(100℃15分以上)を行い、発芽細菌を殺菌する。
セレウス菌
特徴
土壌、水中など自然界に広く分布し、特に米、麦、豆などの穀類に付着している。
熱に強い芽胞を生成する。
嘔吐毒素(セレウリド)と下痢毒素(エンテロトキシン)の2種類を産出する。
嘔吐毒素(セレウリド)は耐熱性を有する。
食品への汚染経路
加熱食品中に生き残った芽胞が、室温に放置された米飯やパスタの中で発芽して増殖する。
原因食品
炒飯、オムライス、ピラフ、パスタ類など、穀類を用いた調理した食品
対策
危険温度帯を避け、セレウス菌の増殖を防止する。
生米は使用前に十分な水で洗米する。