手順6(原則1)ハザード分析の実施④
<潜在的ハザードの評価>
(2)で列挙したハザードが「重大なハザード」か否かの評価を行います。「重大なハザード」とはHACCPによる管理が必要なハザードと言い換えることができます。この管理の必要性の判断は、そのハザードの発生頻度と健康危害の重大性に基づいたリスク評価によって行います。
食品安全においてゼロリスクはありません。そのため、どこまで厳格な管理を要求し重大なハザードとして扱うかは最終的には各事業者、組織の責任であって正解はありません。もっとも、その判断において各病原菌の特性や許容菌量、業界情報といった化学的情報をもとにすることは重要です。HACCPチームは様々な角度から情報を収集し、この判断を行います。
この判断結果を(3)にYes/Noで記載し、同時にそのように判断した理由を(4)に記載します。
鯖の味噌煮による記載例
(1) 工程 | (2) (1)で予想されるハザード (生物・化学・物理) | (3) 重大なハザードか否か (Yes/No) | (4) (3)欄の判断をした根拠 | (5) | (6) |
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1.受入 (冷凍鯖) | [生物的] (非芽胞菌) ・腸炎ビブリオの存在 | Yes | 原料に存在している可能性がある。事故事例も多い。 | ||
(芽胞菌) ・ボツリヌス菌(蛋白非分解型)の存在 | No | 加熱工程で栄養細胞は死滅し、残った芽胞も最終製品が含気包装のため制御できる。 | |||
(寄生虫) ・アニサキスの存在 | No | 冷凍で死滅している。 | |||
[化学的] ・ヒスタミンの存在 | No | 漁獲後の温度、時間を適正に管理している信頼のおける業者から納入している。 | |||
・アレルゲン(鯖)の存在 | Yes | 重篤な症状を引き起こす可能性がある。 | |||
[物理的] ・硬質異物の存在(釣り針など) | No | 釣り針など混入の可能性があるが、信頼のおける業者から納入している。 | |||
2.受入 水(水道水) | [生物的] なし | ||||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし | |||||
3.受入 (冷凍スライス生姜) | [生物的] (芽胞菌) ・セレウス菌の存在 | Yes | 毒素により重篤な症状を引き起こすため。 | ||
[化学的] ・農薬の存在 | No | 安全データシートを入手し管理している。(PRP:前提条件プログラムで管理) | |||
[物理的] ・異物の混入 | No | 規格書を入手し、製造メーカーでの管理確認を行う。 | |||
4.受入 (調味料、味噌) | [生物的] なし | ||||
[化学的] ・アレルゲン(小麦・大豆)の存在 | Yes | 重篤な症状を引き起こす可能性があるため。 | |||
・農薬の残存 | No | 安全データシートを入手し管理している。(PRP:前提条件プログラムで管理) | |||
[物理的] なし | |||||
5.受入 (包装材、ラベル) | [生物的] なし | ||||
[化学的] ・有害化学物質の存在 | No | 安全データシートを入手し管理している。(PRP) | |||
[物理的] ・異物の混入 | No | 受入時に梱包材の破損の有無を確認する。(SOP:標準作業手順で管理) | |||
6.保管 (冷凍鯖) | [生物的] (非芽胞菌) ・病原微生物の汚染 ・病原微生物の増殖 | No | 不適切な管理で増殖の可能性があるが、冷凍庫の衛生、温度管理の遵守で対応できる。 | ||
[化学的] ・ヒスタミンの産生 | No | 不適切な温度管理でヒスタミン産生の可能性があるが、冷凍庫の温度管理の遵守で対応できる。 | |||
[物理的] なし | |||||
7.保管 (冷凍スライス生姜) | [生物的] (非芽胞菌) ・病原微生物の汚染 ・病原微生物の増殖 | No | 不適切な管理で増殖の可能性があるが、冷凍庫の衛生、温度管理の遵守で対応できる。 | ||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし | |||||
8.保管(調味料、味噌) | [生物的] (非芽胞菌) ・病原微生物の汚染 | No | 保管庫の衛生管理の遵守により管理できる。 | ||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし | |||||
9.保管 (包装材、レベル) | [生物的] なし | ||||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし | |||||
10.解凍 | [生物的] (非芽胞菌) ・病原微生物の汚染 | No | 解凍作業手順の遵守で管理できる。 | ||
・病原微生物の増殖 | No | 不適切な温度管理で増殖の可能性があるが、解凍手順の遵守で管理できる。 | |||
[化学的] ・ヒスタミンの産生 | No | 解凍から加熱までの作業時間管理で管理できる。 | |||
[物理的] なし | |||||
11.下処理 | [生物的] (非芽胞菌) ・病原微生物の汚染 | No | 作業手順の遵守で管理できる。 | ||
・病原微生物の増殖 | No | 作業手順の遵守で管理できる。 | |||
[化学的] ・ヒスタミンの産生 | No | 解凍から加熱までの作業時間管理で管理できる。 | |||
[物理的] ・金属異物の混入 | Yes | 下処理時の包丁の刃欠けにより混入する可能性がある。 | |||
12.加熱調理 | [生物的] (非芽胞菌) 病原微生物の生残 | Yes | 加熱不十分により病原微生物が生残する可能性がある。 | ||
(芽胞菌) 病原微生物の生残 | Yes | セレウス菌は加熱により死滅しない。 | |||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし | |||||
13.冷却 | [生物的] ・セレウス菌の増殖 | Yes | 緩慢な冷却により、セレウス菌の増殖の可能性がある。 | ||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし | |||||
14.包装 | [生物的] ・病原微生物の汚染 | No | 不適切な包装により汚染の可能性があるが、PRP,SOPで管理できる。 | ||
・セレウス菌の増殖 | No | 冷蔵陳列までの時間は短時間で、増殖の可能性は低い。 | |||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし | |||||
15.印字、ラベル貼り | [生物的] ・セレウス菌の増殖 | No | 冷蔵陳列までの時間は短時間で、増殖の可能性は低い。 | ||
[化学的] ・アレルゲンの存在 | Yes | アレルギー事故の多くは表示のミスであり、それにより重篤な症状を生じる可能性がある。 | |||
[物理的] なし | |||||
16.冷蔵陳列 | [生物的] ・セレウス菌の増殖 | 冷蔵設備の適切な温度管理で管理できる。 | |||
[化学的] なし | |||||
[物理的] なし |